奨学金の返済を繰り上げ・一括返済したほうがいいのか問題。
私の結論としては、有利子の場合でも一括返済はしないことをおすすめします。
返済できるだけのお金が貯まっても一括で返済にない代わりに、株投資をする方法が最も合理的であると考えています。
奨学金は一括返済しないほうがお得になる
「奨学金の返済は繰り上げ・一括返済しない方が得になるから、しないほうがいい」という立場なのですが、重要なポイントが一つあります。
それは、奨学金を一括返済するよりも、つみたてNISAで投資信託を運用するということです。
つまり、こういうことです。
つみたてNISAで選ぶべき投資信託
つみたてNISAとは、年間40万円を上限として、20年間にわたって、投資によって得られた売却益や分配金・配当金が非課税になる制度です。
通常は投資によって得られたお金には、約20%の税金がかかりますが、これが0円になる素晴らしい制度です。
つみたてNISAで個別株は購入ができないのですが、金融庁が定めた基準を満たす特定の投資信託・ETFに投資が可能です。
投資信託は投資ファンドが運用しているため、信託手数料がかかるのですが、日本の投資信託のなかでは優良といわれる商品もつみたてNISAの投資対象となっています。
その中で、選びたい投資信託は以下の2つです。
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とはいえ、米国市場への一点投資になるのでリスクはあります。ただ、以下の通り、米国市場は過去より素晴らしい経済成長をしてきており、今後も労働人口が増えていくため、堅実な経済成長が見込めます。
金融商品 | 信託手数料 | 投資対象 | ベンチマークETFの直近5年のトータルリターン |
---|---|---|---|
楽天VTI | 0.1696% | 米国市場全体 (約4,000社) | 15.58% |
SlimS&P500 | 0.1728% | 米国大型株 (約500社) | 15.68% |
ご覧の通り、直近5年で15%ものトータルリターンの好成績を収めています。
ただ、これはあくまで過去の傾向で、今後はここまでの伸びは期待できないとよく言われています。そのため、トータルリターン5%が現実的なラインだと思います。 (この数字に根拠はありません)
通常の特定口座であれば、この5%の運用益から20%の税金が引かれるわけですが、つみたてNISAであれば、まるまる利益とすることができます。
第二種奨学金 (有利子) の利率について
日本学生支援機構の奨学金の利率計算には以下の2つの方式があります。
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いずれの利率方法においても、利率3%が上限となっています。
利率固定式とは、奨学金の貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用される方式です。
過去10年分の利率固定式の年利を調べてみた。
非常に見にくくなってしまったのだが、平成19年が一番高くて1.9%近くもありますが、直近の平成30年の年利はわずか0.2%前後です。
次に、利率見直し式とは、返還期間中、おおむね5年毎に見直された利率が適用される方式です。
こちらも過去10年分の利率を調べてみました。
利率固定式よりも少し低く、平成19年の1.5%が最も高くて、平成30年だとなんと0.01%の年利です。
ほぼゼロ金利ですね。
つまり、奨学金の利率は固定式でも見直し式でも、基本的には2%を超えることはないということです。
奨学金300万円の返済シュミレーションをしてみた
少し古いですが、平成24年の文部科学省の調査結果データを見ると、学部生の奨学金平均受給額は296万円のようです。
つまり、大学時代に奨学金を借りていた人は、新卒時点 (22歳) で平均して約300万円の奨学金 (借金) 背負って社会人をスタートしているわけですね。
さて、この300万円の奨学金をどのように返済していくことが最もお得になるのか、シュミレーションしていきたいと思います。
現実性を考慮して、以下の条件でシュミレーションします。
【前提条件】
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①【無利子】現金預金×一括返済はしない
「新卒22歳から毎年40万円を銀行預金して、同時に毎年18万円の奨学金を返済するぞ! 一括返済はしない!」
結果としては、39歳の時点で奨学金の返済が完了します。
奨学金を無利子で借りられているので、借りた以上の奨学金を払う必要もありません。一方で、銀行預金を行っているだけなので、運用益もほぼ0円です。
このパターン①が基準になります。
②【無利子】つみたてNISA×一括返済はしない
「新卒22歳から毎年40万円をつみたてNISAに投資して、同時に毎年18万円の奨学金を返済するぞ! 一括返済はしない!」
新卒22歳の時点から返済のつもりはなく、貯金できたお金は全てつみたてNISAに投資しています。奨学金の返済が完了する39歳時点で運用益はどうなっているでしょう。
なんと、つみたてNISAでの運用益+約340万円となる計算です。
奨学金の一括返済をしない場合でも、銀行預金でお金を眠らせずに、つみたてNISAに投資するほうが圧倒的に利益が見込める、ということです。
③【無利子】現金預金で一括返済後に、つみたてNISAに投資
「新卒22歳から毎年40万円を銀行預金と、同時に毎年18万円の奨学金を返済するぞ! 27歳の時点で奨学金を一括返済して、その後はつみたてNISAに投資!」
新卒22歳から毎年40万円の銀行預金と18万円の奨学金の返済を行なうと、27歳時点で奨学金を一括返済することができます。
一括返済後は、預金できるお金を全てつみたてNISAに投資します。27歳で奨学金を完済した後、本来は奨学金を完済する年齢である39歳時点で運用益はどうなっているでしょう。
27歳の時点で、奨学金を一括返済しているので、元本がガッツリ減っていますね。
結果としては、運用益は+約160万円になります。
運用益が出ているものの、一括返済しなかった場合が+340万だったので、一括返済はしないほうが得になるということです。
これは投資は投資資本が大きければ大きいほど運用益も大きくなるためです。
④【有利子】現金預金×一括返済はしない
「有利子だから追加分を支払わないといけないど、新卒22歳から毎年40万円を現金預金して、同時に毎年18万円の奨学金を返済するぞ! 奨学金の一括返済はしない!」
結果はどうでしょうか。
投資による運用をしていないので、運用益は0円です。一方で、奨学金の追加分を支払わないといけないので、53万円を余分に支払ってしまっています。
⑤【有利子】つみたてNISA×一括返済はしない
「有利子だから追加分を支払わないといけないけど、新卒22歳から毎年40万円をつみたてNISAに投資、同時に毎年18万円の奨学金を返済するぞ! 奨学金の一括返済はしない!」
有利子による追加分を支払いながらも、つみたてNISAで投資を行っています。結果はどうでしょう。
つみたてNISAの運用益は+340万円。一方で、奨学金の追加支払い分累積は53万円となっています。つまり、差し引きで約290万円はプラスになる計算です。
⑥【有利子】現金預金で一括返済後に、つみたてNISAに投資
「有利子だから追加分を支払わないといけないど、新卒22歳から毎年40万円を現金預金して、同時に毎年18万円の奨学金を返済! 27歳で奨学金を一括返済した後はつみたてNISAに投資!」
有利子ということで、まずは現金預金を行い、27歳時点で奨学金を一括返済した後、つみたてNISAで投資を行います。
つみたてNISAの投資による運用益は+170万円。一方で奨学金の追加支払い分は26万円になります。差し引き、約150万円のプラスの結果になりました。
パターン①~⑥のまとめ
6つのシュミレーションの結果をまとめました。
利子 | 一括返済 | 投資対象 | 損益 | |
---|---|---|---|---|
① | 無利子 | しない | 銀行預金 | +0円 |
② | 無利子 | しない | つみたてNISA | +340万円 |
③ | 無利子 | する | 銀行預金+つみたてNISA | +160万円 |
④ | 有利子 | しない | 銀行預金 | ▲53万円 |
⑤ | 有利子 | しない | つみたてNISA | +290万円 |
⑥ | 有利子 | する | 銀行預金+つみたてNISA | +150万円 |
最も利益が大きいのが、「無利子で一括返済をせずにつみたてNISAを運用した場合」です。逆に、最も損失が大きいのが、「有利子で一括返済をせずに銀行預金を行った場合」です。
一括返済はせずにつみたてNISAで運用を行なうことが最も利益が大きくなるのがわかると思います。
「新卒時点からつみたてNISAを活用してなくて、まとまった現金ができたから一括返済しようか悩んでいる!」って人の場合でも、一括返済はせずに、つみたてNISAの投資資金に回したほうが結果はよくなります。
まとめ
再度、結論です。
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今回は、つみたてNISAだけで利益を想定しているので、もっと貯蓄ができる人であれば、特定口座でもローリスクの株投資を行なうことでさらに効果は大きくなります。
▼将来が不安なサラリーマンはつみたてNISAで月3.3万円投資すればいい
▼サラリーマンの株投資は米国高配当株ETE【VYM】がおすすめな理由
以上
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